遍路というものは宗教と切っても切り離せない部分があり、それを表現する際にも、一般には使われないような“特殊な用語”が用いられるケースが多いものです。
そんな特殊な「遍路用語」のいくつかを、ここで解説。
以下、「最低限知っておきたい遍路用語解説」を、行っていこうと思います。
ただし、用語の大半は“独自解釈”しておりますので、その点はご了承の程を。
遍路(へんろ)
四国八十八ヶ所の寺を巡ること。そこから、遍路を行う人のことも「遍路」と呼ぶようになる。 その一方、「遍路とは修験者や僧侶の修行」という見方も根強く、寺院関係者ではない“一般的な遍路”の場合は「お遍路さん」や「お四国さん」という呼び方もされている。
札所(ふだしょ)【関連用語】
四国八十八ヶ所の「お寺」のこと。
以前にはお寺を参拝した際、その参拝の証として「木製のお札(ふだ)をお堂などに打ち付ける」 習慣があったことの名残で、今でも八十八ヶ所のお寺のことを“札所”と呼び続けている。 なお、現在では木札を用いることがなく「紙製の札」を各札所のお堂前に設置された納札箱へと入れるようになっている。
・本堂(ほんどう)
各札所にある本尊が安置してある場所のこと。
なお、本尊とは「各札所で信仰の対象として祀っている仏や菩薩」。例えば1番札所の本尊は釈迦如来、88番札所の本尊は薬師如来と、各札所で異なることが多い。
・大師堂(だいしどう)
各札所にある弘法大師・空海を祀った場所のこと。
参拝の際には「本堂⇒大師堂」という順番で行う。
打つ(うつ)【関連用語】
四国八十八ヶ所のお寺を参拝すること。
参拝の際に 寺のお堂などに木札を打ち付ける習慣があったことから、今でも参拝のことを“打つ”と表現される。
・順打ち(じゅんうち)
札所を1番から2番というように、“番号通りの順番に寺を参拝”する こと。
・逆打ち(ぎゃくうち)
札所を88番から87番というように“札所番号とは順番を逆にして参拝”すること。
これは昔の愛媛県松山市に当たる場所に住んでいた「衛門三郎」 (えもんさぶろう)が空海に会いたい一心で札所の順番を逆に回ったことを起源とする説がある。
なお、「四国八十八ヶ所を逆打ちで回れば死者が蘇(よみがえ)る・・・」との説は、1999年公開の映画『死国』 による影響。
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・通し打ち (とうしうち)
四国八十八ヶ所の寺を一度で参拝する際の、遍路内で用いられる用語。
四国現地では 「通し打ち」と言っても即座に理解してもらえることは少なく、「1回で全部回る」などと表現した方が良い場合も。
・区切り打ち(くぎりうち)
四国八十八ヶ所を数回に分けて参拝する際の、遍路内で用いられる用語。
今や現代遍路の主流ともいえる参拝方法であり、四国現地でも土日だけ札所巡りを行う“週末遍路”という語も用いられるようになった。
「通し打ち」同様にこの語も現地では即座に理解されず、「仕事の合間に何度かに分けて参拝しています」、「ゴールデンウイークと年末だけ参拝しています」などと表現する方が、理解されやすい場合も。
・一国打ち(いっこくうち)
四国八十八ヶ所を県別に分け、それぞれの県にある札所だけを参拝する際の呼び名。古来から用いられる“区切り打ちの変形”。
昔は徳島県を阿波の国、高知県を土佐の国、愛媛県を伊予の国、香川県を讃岐の国として区分されており、例えば高知県内の札所のみを参拝する場合は“土佐一国打ち”などと表現した。
同行二人(どうぎょうににん)
遍路中は例え一人であっても弘法大師と二人で参拝しているということを意味する、遍路において最も重要とされる心得。
遍路道(へんろみち)
文字通りお寺とお寺を結ぶ遍路が通る道。基本的には、お寺までの“最短ルート”であり、とりわけ遍路しか通らないような“山道”(登山道)を指す。
しかし中には、車の往来を避けるための回り道、古くからあるお堂を見るためのチョッと遠回りの道、国道に対する旧道など、その種類も様々。
納経(のうきょう)【関連用語】
四国八十八ヶ所各札所で写経したお経を納めるというのが、本来的な意味。 現在でもこの習慣を守る人は少なからずいる 。
なお、“現代的な納経” は、各札所のお堂の前で経本(お経の書かれた本)を読み上げて“写経を納める代わり”とされる方の数が多い。
・御朱印(ごしゅいん)
各札所のお堂で納経をした“証明”のような形で、札所が参拝者に与える墨書や判子(ハンコ)の印(しるし)。お堂で経を納め、納経所で御朱印をいただくまでのプロセスを“納経”と呼ぶ傾向がある。
現代ではこれが“有料” となっており、御朱印をしてもらえるのは「納経帳」(のうきょうちょう:帳面)・「納経軸」(のうきょうじく:いわゆる「掛け軸」)・白衣(びゃくえ:白装束の衣服)に限られる。さらに納経時間にも制限があり、各札所に設置された納経所の受付時間は90年代後半より、午前7時から午後5時まで(原則)となっている。
お接待(おせったい)
四国八十八ヶ所の参拝時において、主に金品の施しを受けたりすること。
より具体的には、白装束の遍路衣装で歩いていると「お金」や「食べ物」、「車で次の札所まで送る」、ごくまれには「一夜の宿」などを“無料”で提供されることもある。
四国、とりわけ札所の沿道に住んでおられる方の中には「遍路=弘法大師」といった“大師信仰”が根強く残っており、出会った遍路にお接待(善行)を施すことで現世、もしくは来世において幸福が得られるという考え方が起源。
なお、お接待を受けた遍路は自身の所有する「納め札」を渡すのがしきたりとする説もある。
先達(せんだつ)
宗教的には、一般信者を導く指導者を意味する。
これが四国遍路では「四国八十八ヶ所巡拝4回以上」、四国八十八ヶ所霊場会主催の「先達講習会参加者」、「四国八十八ヶ所の寺から推薦を受ける」、さらには「四国霊場会の審査に合格」という条件をクリアした者のみに与えられる資格を意味します。 なお、先達にも“ランキング”(階層)というものが存し、四国八十八ヶ所への“貢献度”によって4つの資格に分かれる。
結願(けちがん)
四国八十八ヶ所の全ての寺を打ち終えること。大本(おおもと)の意味は“願掛けの最終日”であり、その日を持って自分が神仏に託した願いが叶うとされた。
遍路では、1番札所から遍路行を始め88番札所で参拝終了するということの意味に解されることが多い。
お礼参り(おれいまいり)
一般には神社仏閣に願掛けをして、その願いが成就した時にお礼として礼拝や布施を行なうこと、とされる。
ただし、四国遍路ではこのお礼参りが「88番札所で結願した後に1番札所を再び参拝すること」 、さらには「88番札所の参拝後、1番札所および高野山を参拝すること」に解されることが多い。
なお、この「お礼参り」には陰謀論を含めた諸説があり、基本的には「1番札所から遍路を始めたら88番で結願、遍路終了」と考える方が、“四国遍路的”には無理がないと思われる。
以上が、遍路中によく使うことになるであろう「最低限知っておきたい遍路用語解説」。
モチロン、寺での作法に関する様々な用語を加えると数はもっと増えることになりますが、とりあえずは、これらだけを抑えておけば、それほど困ることにはならないでしょう。
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